一度本音を吐けば楽になると思うのです(受験生は閲覧注意)

9期の円充填と申します。簡単に自己紹介をいたしますと、名古屋で生まれ育ち、大学進学と同時に上京。現在は東京大学医学部医学科の3年生で、まあ典型的と言いましょうか、大学受験業界でバイトをしています。某塾の講師や家庭教師など、稼ぎが何倍も違う同期を羨むこともしばしばあります。東京での一人暮らしにはお金がかかるのです。

そんな私が普段書く文章といえば、締め切り直前のレポートかTwitter*1での愚痴くらいのもので、AVCCを書くのも今年が初めてです。結果、ウィットに富んだ自虐からウィットを抜いた文章になりましたので、大学受験を控えた受験生、特に医学部志望生はご覧にならないよう強く忠告する次第です。また、以下に述べるのはあくまでも私個人の経験ですから、お読みになった皆様が自分や他人についてあれこれと不安がる必要はございません。

さて私ごとながら、11月の下旬から2週間少々体調を崩しました。第1週は喉の痛み程度だったのですが、以降は39 ℃台の発熱や咳など、本格的な風邪をひいてしまいました。検査によるとインフルエンザや新型コロナではなく、症状を抑える薬を飲んで耐える日々でした。いっそのことインフルエンザであれば、イナビルを吸って翌日から解熱、という楽な経過だったのではないかと思っています。それに、インフルエンザというのが分かれば診断書を書いてもらえる。実は風邪のせいで薬理学の試験や病理学の実習を欠席しまして、特に試験などというのは、正当な欠席であることを証明できれば追試験*2を受けられるのです。しかし、私の場合は診断書などありませんから、「診療明細なら手元にあるがこれで本当に病欠だったと認められないか」と事務に聞いてみましたが、はいともいいえともない曖昧な返答に終わり、再試験を受けることになりそうです。教授はともかく、事務はとあるネットミームの如く......ということでございますね。1年も過ごせば諦めがつくものです。

このような、高熱にうなされたり試験の心配をしたりという日々では、思考は自ずとネガティブな方向に進むものです。よくある病態ではありましょうが、私も「医学部向いてない症候群」を発症してしまいました。今では症状が改善してきましたが、そもそもの問題として、バイト先では生徒の先輩としての振る舞いを求められ、大学のネガティブキャンペーンなどできないという制約が負担になっているように思われます。そこでこの機会に、勉強に対する本音の8割ほどを公開してしまおうと思うのです。




















医学生たるもの、医学部を目指した表向きの理由の一つや二つは持っているものです。入試で必ず訊かれますから。私も「がんの早期発見技術の開発→治療費の削減→社会保障の拡充」というような論旨を準備していた記憶があります。この志望理由が嘘だというつもりはありませんが、しかし、これだけが理由というわけでもない。幼少期に医者になりたいと言ったのを10年以上引きずっている祖母だとか、高校では数学や理論物理学がおもしろかったものの、それで飯を食えるのか、飯を食わねばと思うと嫌いにならないかという不安感だとか、「理科三類」や「医師」という肩書きに対する名誉欲だとか、雑念に塗れています。当時の出願校にこういう混沌とした志望動機が現れていて、前期はもちろん東京大学理科三類なのですが、後期に東北大学の数学科を志望したのでした。前期試験で不合格になれば、祖母に対しては医学部に行かない口実に、自身に対しては医学ではなく理学を志す運命なのだという言い訳になるというわけです。

しかし現実には、絶対に不合格だという試験後の落ち込みに反して東大から合格をもらい、駒場に通うようになりました。今思えば前期教養とは良いもので、特に、いろんな分野の話を興味の赴くままに聞ける総合科目*3というものは実に自分の性に合いました。この頃は、数学の授業を受け、興味を持った本を積読し、数人でランダウを輪読するという楽しい時期でした。

時は経ち医学部へ進学しました。そこでの講義といえばレジュメかスライドを見ながら何時間も話を聞くだけ。単に頭に入らないどころか、あまりに退屈でSNSやら内職やらを始めます。ただ、顕微鏡で標本を観察してスケッチする組織学とか、この春に行った解剖実習であれば、手を動かすことで集中でき、疲れるものの達成感もあったのでした。しかしここで、医学部での勉強の最大の難関に圧倒されます。

医学部に入ってからすっかり頭が悪くなった気がします。医学部での勉強のほとんどは暗記なのです。ラテン語だったり英語だったりで一定しない専門用語、大学はリベラルアーツを標榜しながら自分の専門分野ばかり講義・テストに出題する教授、稀に数学の能力が活きるかと思いきや、前触れなく現れる方程式と天下り式の説明すらないその解、レポート課題に何千字も書いている同期*4。敵や不安には事欠きません。解剖学まではなんとか耐えられましたが、生理学でとうとう音を上げます。再試験の勉強すらやる気がなくなり、先日再試験を受験しました。結果はまだ分かりませんが、五分五分だろうと思っています。

地元の医学部には、高校の同級生や浪人した先輩が30人ほど集まっています。私は新天地を目指して上京しましたが、こういうときには気の合う友人に相談できる方が楽かもしれません。いくら東京で新たに友人を作っても付き合いの長さは敵わないのです。

以上、私のツイートを集めてきたような文章でした。最後に、不幸にもこんな駄文を読んで気分を落としている医学部志望者のために慰めの言葉を書いておきます。医学部の暗記は辛いですし、今勉強している数学も物理も学部ではほとんど活きません(化学は少しだけ、生物は結構役立ちます)。しかし、先生たちの研究話を聞くところでは、生物の数学的・物理学的解析や医療関連の人工知能開発など、数理能力を活かせる研究は間違いなく存在します。私も、今は成績不良であっても将来活躍できる可能性は残っているはずだと自らを元気づけて生きています。お互い強く生きましょう。

*1:私のスマホではいまだに鳥のアイコンのままなので、Twitterと言っても間違いではないでしょう。

*2:本試験で不可になった人が可をもらうために受ける再試験と異なり、本試験と同様に成績がつく。なお日時や問題は共通

*3:前期教養での科目の分類の一つ。この分野から6単位、あの分野から6単位と最低限のラインがあり、それを満たすように好きな授業を取れる

*4:本当に何を書いているんでしょう?そんなに物知りなのか、それともよほど沢山の関連論文を読んだのでしょうか…