物理学と謎解きの類似性入門

皆さん初めまして!

AnotherVision10期のeFRM(えふらむ)です。

それでは、簡単に自己紹介をさせていただきます!

映像作ったり、謎作ったりしてる人です!

趣味は、謎解きはもちろんのこと、理系全般が学問としてもエンタメコンテンツとしても好きで、特に物理が好きです。(数学もそれなりに好きで、最近は生物にもかなり肩入れしてます)

 

そんな僕は、今回なんと謎解きと物理の類似性に関する教科書を発見しました!!?

ただ、その教科書は書きかけなのか一章までしかなくて...。本当はこの3倍以上のボリュームの予定だったんですけど、そんな余白も時間もあるはずがなく...

とはいえ、内容がとても面白いので、この機会に皆さんに共有しようと思います!!

 

これを読んでしまった謎クラさんはきっと物理学にはまってしまうんじゃないでしょうか??

 

 

 

0.はじめに

本書は、物理学と謎解きが同値だと示すことを目標にしたときに必要となってくる、両者の類似性について初歩的なところから解説する入門的なものである。主として、物理学または謎解きについて詳しい読者を想定しているが、そうでない人も(物理学か謎解きのどちらかに興味がある人なら)読めるよう、なるべく行間を作らないようにしたつもりである。

今まで、物理学単体を詳しく解説する書物や、謎解きに関する書物は多数出版されてきた。一方で、これら二つの類似性について詳しく議論した書物は私の知る限り無い。そこで私は、今まで誰もしてこなかった試みとして、この文章を書くことを決意した。今回は主に理論物理学と謎解きの類似性について議論したが、実験を含む一般的な物理学と謎解きの同値性においては、今後執筆するかもしれない「物理学と謎解きの類似性発展(仮)」において詳しく示す予定なので、興味のある読者はそちらを参照されたい。

両者には明らかな類似性があるのだが、それらを論理的に説明したり、そのことに納得することは容易いことではない。その助けとして本書は役に立つであろう。また、本来であれば厳密な証明を載せるべきなのであろうが、それを書くには余白も時間も少なすぎるので、ここでは割愛させていただく。

興味のある読者は(以下略)

 

最後に、ここに記載の内容は全て筆者一個人の見解によるものであり、所属団体*1や運営は一切関係無い。そのため、本書の誤りや解釈等はすべて私一人の責任である点、ご理解いただきたい。

 

 

1.物理学の理論(が生まれる過程)と謎解き

この章においては、謎解きと呼ぶにふさわしい物理学の理論(の構築)の過程、あるいは物理学の理論の構築といえる謎解きについて具体例をいくつか挙げて解説する。

ただし、謎解きに関しては既存の具体的なものを挙げることはネタバレとなってしまうためここでは控えさせていただくことをあらかじめ謝罪しておく*2。そのかわり、いわゆる「ベタ謎」といわれる概念等を使って説明していく。

1-1ニュートン力学と法則発見性の謎解き

ニュートン力学とは、古典力学ともいわれ、量子力学が生まれる以前の力学の理論を指すものである。ただしこの節においては相対論的な効果を考慮せずに、物体の運動について議論する、「いわゆる」ニュートン力学に絞って話を進める*3

以下では、ニュートン力学の三法則と、いわゆるベタ謎、特に「法則を発見し、それを適用するもの」との類似性を、両者を比較しながら述べていく。

まず、ニュートン力学の三法則について改めて述べる。

 

第一法則:静止している物体は、力を加えられない限り静止したままであり、等速度運動する物体は、力を加えられない限りその速度で運動する。(慣性の法則)

第二法則:物体に働く力をF、質量をm、加速度をa、とすると、運動方程式が「ma=F」と書ける。

第三法則:ある物体が、別の物体から力を加えられているとき、その物体も、力を加えている物体に対して、逆向きに同じ大きさの力を加えている。(作用反作用の法則)

 

まず第一法則だが、これはよく「慣性系の存在」を保証するものと言われ、第二法則の成り立つ系の存在を示しているといわれる。

これはいわゆるベタ謎(というよりも謎解き全体において)「法則が存在する」という「暗黙の了解」と対応すると言えよう。

以下の画像を参照してほしい。

(1.1.1)

こちらの謎の答え。「かき」であると考えた人が大半であろう。その人たちは「縦にマス目が五個並んでいることと、青の部分が『あい』を表すことと、橙の部分が『そこ』を表すことから、このマス目が五十音表であることに気づき、それによって解く」という過程を経て問題を解いたのだと推測される。

しかし、この問題は「法則が存在する」という「暗黙の了解」のもとで問題を解いていることを忘れてはいけない。

例えばこの問題の答えが「AnotherVision」であると言われてもそれは違う、と『第一法則』を用いずに示すことはできるだろうか。

それはできない。

「いや、できるだろう」と考えた読者は、無意識のうちに『第一法則』を適用しているのだ。つまり、「この謎には何らかの規則性があり、それに従って問題を解くことができる」と。当然である。規則性がなければ謎として成立しないからだ。

これはニュートン力学、ひいては物理学でも全く同じことがいえる。数式によって世界の事象を記述できるはず、世の中の事象には再現性があるはず、といった思考が科学を支えているのだ!!*4

つまり、謎解きにおいてそもそも「法則が存在する」という「暗黙の了解」と、ニュートン力学において「慣性系が存在する」というのはどちらもそれぞれ「法則が成り立つ」「第二法則の運動方程式が成り立つ」ということを保証するために必要不可欠なものとして対応関係にあると言えよう。

ここまでわかると、第二法則、および第三法則と謎解きの対応関係を見出すのは容易い。それはもちろん、謎解きにおける「法則」そのものだ。

上記の謎においては「マス目は五十音表で、それぞれ文字が入る」や、「『・・・』によって記号と言葉が対応する」などと言えようか。

ただしこんな単純な話では終わらない。今度は、謎解きを、物理学の理論の構成の過程として見る視点から考えてみよう。

今回の場合、五十音表はあ段からお段まで、マス目が五列ある*5という「常識」と青い部分が「あい」、橙の部分が「そこ」であることから、与えられたマス目が五十音表であるという「規則」を見出し謎を解いた。

これはまさに「物体に力を加えるとその力と同じ方向に加速する」という「経験的事実」や「様々な物体に様々な力を加えた結果、ma=Fという関係がそれらの物体において成り立っている」という実験結果から「すべての物体はma=Fという関係が成り立つ」という「規則」を導く物理学の理論の構成の過程と全く同じと言えるだろう*6

このように、ニュートン力学、およびその理論の構成は、謎解き(今回例に出したものは五十音表のベタ謎)と対応していると考えられる。

今回は例に出さなかったニュートン力学のほかの概念についても、謎解きと対応するものがある。その一例を演習問題として読者に課そう。解答は脚注から飛べる。

 

演習問題1ー1*7

ニュートン力学における「ガリレイ変換」に対応するものは(1.1.1)においては何かを述べ、それが成り立っていることを証明せよ。

 

1ー2特殊相対性理論と発想突飛(転換)系謎解き

この節では、特殊相対性理論と謎解き、特に突飛な発想をしたり、発想を転換させる系の謎解きの関連性について述べたい。

その為にも、この節で必要な特殊相対性理論の考えについて、簡潔にまとめておこう*8

なお、以下においては、わかりやすさを優先した結果、厳密性を損なう記述がいくつかみられる。その点、ご容赦願いたい。

 

この節で特に大切なものは「光速度不変の原理」である。簡単に言うと、誰から見ても光の速さは同じである、ということだ。

例えば、駅のホーム上で特急列車を見た場合はとても速く感じるだろうが、並走する普通列車の窓から見た場合はそこまで速く感じないはずだ。

このように、一般的な物体の速さは、誰が見るかによって変わるのが普通だ*9

ところが、光の場合は、どんな速さで動く人が見ても、光は全く同じ速さに見えるというのだ。そして、それを仮定するには「時間の進みは人によって違う」という常識はずれな考えを受け入れることが必要になってくる。

 

このような、常識はずれな考えを受け入れることは、まさに謎解きと言えるではないだろうか?

実際、常識ではありえないような発想をしなければならなかったり、先入観を取っ払って発想を転換することが要求される謎解き公演は多い。

こう捉えると特殊相対性理論が生まれた過程は、謎解き公演の大謎の解決そのものであるといっても差し支えないだろう。

実際、特殊相対性理論が生まれる前には、「エーテル」と言われる物質が、光という波をを伝えておりその「エーテル」の静止系があるはずだ、と考えられていたそうだ。ところが、その考えでは説明できないような実験結果が多く得られたことで、当時の物理学者に大きな混乱を与えたらしい。

そんな中あの大天才、アインシュタインが「時間の流れは人によって異なる」という常識はずれな考えを受け入れなければいけない「光速度不変の原理」を仮定し、特殊相対性理論を作り上げて様々な実験結果を矛盾なくきれいに説明した。

これは、謎解き公演でいうところの「△△だと思っていたままゲームが難なく進んでいたが、途中で矛盾が生じ、実は○○という常識ではありえない状況を仮定しないと進まなくなる。そしてそれにチームの一人が気付いたおかげで、正しい行動ができ見事ゲームクリアとなった」というもの、あるいは「どうにかして○○という行動をしたいのだが今のままではできない。そこで突飛な発想をすることで普通じゃありえない方法で○○を行い見事ゲームクリア」というものであろう*10

 

演習問題1ー2*11

特殊相対性理論の形成過程における「エーテル」に対応するものを、あなたが謎解き公演で経験したものの中から複数挙げよ。

 

 

1-3電磁気学と謎のきれいな再利用

この節では電磁気学と、謎のきれいな再利用の関連について述べたい。

まず最初に電磁気学の説明と、その美しさについて簡単にまとめる*12

 

電磁気学においては以下のマクスウェル方程式がそのすべてを担っているといっても差し支えない。

(Wikipediaから拝借させていただいた)

ここでEは電場というものを、Bは磁場というものを表している。

またDHにはD=εEB=μHという関係がある。

この式を見ればわかる通り、電場と磁場にはかなり似通った関係があることがわかるだろう。実際にこれらの式から導かれる電磁波の式から、光が電場と磁場の波であることがわかるのだが、電場と磁場がお互いに直行しながら進んでいくこともわかる。また、電気双極子が作る電場と、磁気双極子モーメントが作る磁場や、それぞれの場のエネルギー密度等を導く際も、この二つの場の関係の美しさに感銘することだろう*13

 

この美しさは、謎解きでいう、謎の再利用と対応するといえるのだ。

読者も、一定以上謎解き公演に参加、あるいは持ち帰り謎やweb謎等を解いたことがあれば一度は遭遇したことがあるはずだ。

「あ、これって序盤に解いた○○と同じ規則じゃない?!」

「序盤に使ったアレを使えばこの状況を打破できるかも!」

などなど。

このような、謎のきれいな再利用には時に芸術的な美しさがあり「この実装すごいなぁ」と感心することもあるだろう。

これは電磁気学における、電場と磁場の関係にも言えることではなかろうか。

電場でした計算とほとんど同じようなことをするだけで、磁場でも同じような結果がいえる等々は、まさに「神によるこの世界の実装、凄いなぁ」という関心につながるのだ。

前二節では、物理学の理論の構成として、物理学者と謎解きプレイヤーにある種の関連性があるように述べたが、この場合では、謎制作者と、この世の物理法則を創造した*14神にある種の関連性があるといえる。

 

1ー4その他の例

他にも物理学の理論と謎解きが対応する例はいろいろある。以下ではそのうちのいくつかを紹介する。

具体的にどのような対応が得られるかは読者の練習問題としよう。

 

イジング模型の数理物理的取り扱いと、メタ構造の謎解き(1.4.1)

周辺分野(生物、化学、経済等)と物理学の融合(1.4.2)

 

 

 

ということで、いかがだったでしょうか。

物理ってやっぱりとても美しくて面白いですよね。

というか、ここまで物理学と謎解きに深い類似性があったとは...びっくりです!!!

これを読んでるうちにJJサクライ*15と清水熱力学*16を早く読みたくなってきました。

なので今から駒場の図書館に籠ってきます。

ということで、以上AnotherVision10期のeFRM(えふらむ)でした~*17

*1:AnotherVision

*2:具体的な謎解き公演や持ち帰り謎等で、それがどう物理学の理論の構築といえるかどうしても知りたくなった場合は、知り合いの物理学者、あるいは知り合いの謎解き猛者に聞いてみるとよい。きっと良い答えが返ってくるだろう

*3:ニュートン力学について不安な読者は、高校物理の参考書の力学の章を読むか動画サイト等で調べるとよいだろう。

*4:それってあなたの感想ですよね、と言われたらそうですとしか言いようがないのだが

*5:ここで線形代数を知っているものは、なぜ「行」としなかったのかというツッコミを入れてくるかもしれないが、五十音表においてはあ行、か行と言われるのでそれに習った

*6:もちろんニュートン力学が全く同じような過程を経て作られたというわけではないことにご留意いただきたい

*7:解答:例示の変更 証明は略

*8:特殊相対性理論になじみ深い読者は以下を飛ばしていただいて構わない

*9:ここで、列車にはちゃんと「時速何キロで走っている」というのがあるではないか、と思う人がいるかもしれない。しかし、それはあくまで「地面」つまり「地球」から見た速さであり、そもそも地球が常に動いていることを考慮すると、絶対的な速度がない、ということに納得できるであろう

*10:筆者自身も、この「見事ゲームクリア」を除けば何度も経験がある

*11:解答:略

*12:例のごとく、電磁気学に明るい読者はここを飛ばしても構わない

*13:ここら辺の話がわけわからない人は一冊電磁気の教科書を読んでみるとよい。その美しさに心奪われるはずだ

*14:という表現が適切かどうかはわからないが

*15:物理学徒なら誰もが知る量子力学の古典的名著

*16:こちらも熱力学に関する素晴らしい書。僕が最も好きな本の一つなのでぜひ読んでほしい

*17:もちろんこの教科書は見つけてきた物ではなく僕が温めていた考えを、この機会に形にしたものですのであしからず。また冒頭で述べた通り、あくまで僕個人が考えたことなので、「アナビもこう解釈してるんだ!」とか全く無いです。念のため